狂人とは

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1階は、二人が待機する場所のようだった。個室が2つ。共同スペース、洗濯場、台所まである。 2階には、学生たちが使用していた4人部屋がいくつかあった。シンとしており、誰もいない、ということが不気味さを感じさせる。もちろん、トイレ、洗面所にも誰もいない。 そして3階。患者がいるという部屋を探してみた。 特段、変わりがるというわけではなく、2階とほとんど造りは同じだった。4人部屋がいくつかあり、他はトイレ、洗面所のみ。 「誰もいないね、もしかして騙されてんじゃない?」と斎藤がブツブツ言い始める。 早川はそんな斎藤の後ろに隠れるようにして歩いていた。 「早川ちゃん、そんなくっつかれた歩きにくい」 「それでも私はくっつきたい。なぜなら怖いから」 端から端まで歩き、廊下からでは何もわからいと感じた斎藤は一番近くにある部屋の戸をノックした。 「な、何やってるんですか斎藤さん!」 「何って、何も分からんから、ひとつひとつ入ってくのさ」 怯える早川を余所に斎藤は「失礼します」と言い、部屋の中に入った。 部屋の中は2段ベッドが二つと、和室があった。 「誰もいないね」 「早く出ますよ、そして1階で待機しましょう」 そういって、斎藤の服を引っ張る早川の耳に「ゴトッ」という鈍い音が入った。 「さ、斎藤さん、今の音・・・」 「音?」 斎藤には聞こえていなかったみたいだが、早川には隣の部屋から物音がしたとわかった。 そのことを斎藤に言えば、おそらく斎藤はその部屋に入るし、言わずとも次の部屋、という理由で物音の正体を見つけることになるだろう。 「は、早く1階に行きますよ」 「だから、患者に挨拶くらいしなきゃダメだって」と言い、斎藤は部屋からでて、隣の部屋のドアをノックする。 あぁ、やってしまった・・・ そう思い、早川が目をギュッとつぶり、斎藤の背中にくっつく。
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