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『もうイヤ……』
『なんで私だけがこんな辛い目に遭わなきゃいけないの』
『誰か、代わってよ』
耳の奥に木霊するのは自分の声。
これは……
この台詞は……
連日のショックな出来事に堪えられず、お酒を飲んで弱音を吐いた私の言葉。
声のする方に目を向けると、そこには私とは逆に、左手にスマホを持ち、右手で画面を触ったまま同じように立ち尽くしている自分の姿が、身嗜みをチェックする為に購入した大きな鏡の中に映っていた。
吸い寄せられるように鏡に近付く。
ペタペタと自分の顔を触ると、鏡の中の自分も同じ動作をすることにホッとする。
間違いなく、私がオリジナルで、鏡の中にいる自分は映し出されているだけの鏡像。
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