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二、三日が過ぎました。
僕がダンボールをいつものように運んでいると、ふと何か違和感を覚えました。
ダンボールを開けてみると、そこにいたのはピートくんでした。
「ピートくん!」
しかし返事はありません。電源が切られているようです。
そこへ別のロボットがやってきたので、僕は慌ててピートくんの詰まったダンボールをベルトコンベアーに下ろしました。
でも、なんだか気になって後を追いかけると、ピートくんの入ったダンボールは左の赤い扉へ吸い込まれていきます。
「ギャー!」
ピートくんの叫び声がしました。
ああ、僕はなんて事をしてしまったんだろう。僕は恐怖のあまりガタガタ震えだしました。
「おや、なぜこんな所にロボットが?」
すると工場長がやってきました。
「しかも旧式じゃないか。まだいたんだな。来なさい、君も新しく生まれ変わらせてあげよう」
僕は嫌だと叫びたかったのですが、工場長は僕の電源を無理やり落としました。
気がつくと、僕は狭くて暗くて温かい空間に居ました。
きっとダンボールに箱詰めされているに違いありません。
僕は一生懸命体をねじったりダンボールを蹴ってみたり しましたが、箱が開く気配はありません。
箱が動かされる気配がしました。
きっと箱詰めされたままベルトコンベアーに乗り、あの扉の向こうへと流されていくのでしょう。青い扉か、赤い扉か、どちらかへ。
扉が開く気配がしました。
するといきなりダンボールが開けられ、僕は眩い光の中へ放り出されました。
そこは真っ白な天井。白い白衣を着た男がカチャカチャと何かの器具を取り出しています。
彼は銀色のはさみで僕の臍から出ている何やら長いひものようなものを切ると、今度は別の女性が現れ、僕を持ち上げて言いました。
「元気な男の子ですよー!」
僕はようやく理解しました。
僕は人間として生まれ変わったのだと。
そして色々な事を思い出しました。
前世で僕は過労のため心身を病んで自殺したこと。
死んでからは、感情も痛みも疲れもないロボットのような状態にされ、延々と労働を強いられたこと。
しかし、その状況に満足しきっていた僕への罰なのでしょうか。また人間に生まれ変わらせられ、汗水たらして働く人生に戻るなんて!
「オギャアアアアア!!」
僕は絶望のあまり大きな声をあげたのでした。
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