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「解っておる。希理恵を頼んだぞ」
龍が進撃した恐怖よりも更に強いそれが、歴戦の猛者である才蔵の背筋を凍らせる。まるで巨大な獣のを前にしているかのように。少しでも逆らえば首を引き千切られるだろう。臆した風魔に失笑を送り、スペード達は去っていった。
「カッコいいこと言うわねぇ。ハートが惚れるわけだわ」
「人を茶化す前に自分の心配をしたらどうですか?負債を払うまで風魔はしつこいですよ」
それと。
「いつまで隠れているつもりだ希理恵。さっさと帰るぞ」
気配を殺すことに長けた忍者も、スペードの鼻には通用しない。角で立ち聞きしていたハートは観念したかのように現れると、滅多に見れない、真っ赤に染めた恥じらいの顔をしていた。
この女、普段から淫らな態度を取るものの、ペースを乱されると脆い一面がある。スペードの男気ある言葉を聞いた時から頭が真っ白になっていた。
所謂惚れ顔である。余裕綽々な表情は欠片もない。
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