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杉本が目を開けるとそこは、いつもの自分の部屋だった。
「……やっぱり夢かぁー……」
敷きっぱなしの煎餅布団で伸びをして、涙で濡れる目元を擦る。
やれやれと起き上がり、携帯ニュースにざっと目を通すと過労死の社員のニュースが目に入り、やはりまた武田を思い出した。
夢だけど、せめて夢の中で休めれば良い。
タバコを探して口にくわえた時、ふとあの約束を思い出し、札よりレシートが出てくる財布から宝くじを取り出した。
「確か昨日が当選発表だったはず……あ、あった。
79組の……えっ? 79組!?
……1996……0、21!
……1!!!!
当たってる!? 嘘っ!? マジで!?
ちょっ、ちょっと待てよ、落ち着け、そうだタバコ、まだ吸ってなかった」
宝くじを握りしめ、ライターでタバコに火をつけながら、もう一度宝くじを見ようと手を動かしたのがいけなかった。
カチッと押した途端、最大火力の炎が宝くじを舐めた。
「なんでーーーー!!!!」
それはありえないスピードで、手品のように一瞬で灰に変わった。
杉本の夢は、叶ったのだ。
そして夢の代償は、確かに夢で支払われた。
ーーーー床に蹲って嘆く杉本が、失せ物屋の水鉢に映り、それを店主は愉快そうに眺めた。その手には杉本の宝くじが収められている。
「まいどあり」
カタリと、店の前にまた何者かが立つ気配がし、店主がニヤリと笑った。
「よくぞここまで来た。ここは失せ物屋。
己の無くしたものを、取り戻してみせよう。
一体何を無くした?」
眠らぬ男 ~終~
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