目を開けると――――

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皆の視線が注がれる中、口を一文字に引き、瞼を瞑って椅子に背を預けた彼は、暫くの間、考え込んだ後、ゆっくりと姿勢を正した。 「……この麻酔薬が原因だという証拠が出ていない以上、疑わしきは罰せず。ノンアレルギーの麻酔薬というものは、他にはない貴重なものだ。アレルギー持ちの患者にとって、これほど心強いものはない」 複雑な表情を浮かべる白衣の男達とは逆に、満足気な笑みを浮かべる製薬会社の男。 だが、彼らは知らない。 いいや、彼らには分かる筈がないのだ。 世界唯一のノンアレルギーの麻酔薬に、たった一つだけ副作用があることを。 その副作用こそが最大の問題だということも。 では、その副作用とは何か? 麻酔によって眠りについている最中に、体から魂(意識)が離脱してしまうということである。 離脱した意識は、心霊体験などでよくある、幽体離脱状態の主観的バージョン。 しかも、神経系を麻痺させている薬の効果で、妄想や幻想までが入り混じるといったオプションつきだ。
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