15.あなたの温もり

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オフィスに残るのは私だけ。 しんと静けさが残る中、不意に雨音が耳をかすめた。 そばにあった窓に近寄ると、ブラインドカーテン越しに外を覗き込む。 小降りだが、切り目のない雨。 …思い出さないようにしていたのに。 会議室で投げ掛けられた楢崎くんの言葉を不意に思い出して、再び胸の奥に痛みが走る。 「あんな冷たく言わなくても…いいのにね…」 沸き上がる涙をグッと堪える。 やっぱり、あなたは変わってしまったんだね。 …もう、あの頃の優しい彼はいない。
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