15.あなたの温もり

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「今日は早めに巡回してるんだ。 悪いけど、もう帰ってもらってもいいかな?」 「あ、はい! すみませんでした」 警備員に促され、慌てて帰る支度を整えた私は気持ち悪さを押し殺して会社の出口まで急いだ。 会社を出ると、雨はまだ降り続いていた。 履いていたローヒールが簡単に浸水してしまうほど、道路は水浸し状態だ。 雨で気温が下がっているせいか、会社にいた時よりもさらに寒気に襲われる。 「冷えるな…」 会社の時計では夜の九時を過ぎていた。 現在の交通公共機関はどうなっているんだろう。 情報が知りたくて、携帯をおもむろに鞄から取り出した。 だけど、真っ暗なその画面に、思わず足を止めてしまった。 こんな時に限って、携帯の充電が切れていたのだ。
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