15.あなたの温もり

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これだと、いつ帰路につけるのかも定かではない。 その事実にくらりと眩暈がした。 ……電車…。 ふと、駅の電光掲示板が視界に入った。 運転が再開していることを確認すると、そのままよろめく足取りで駅の中を進んでいく。 …帰らなきゃ。 良識な判断が出来ない程、意識は朦朧としていた。 早く帰りたい一心で改札に入り、ホームへと上がった。 人の波に揺られながら電車へと乗り込むと、その混雑ぶりに思わず息を呑む。 車内は息が詰まるほど混雑しており、やっとの思いで出口付近にある手すりへ身を預けるようにして掴まった。 電車の揺れと人の熱気は、私を酔いの世界へ連れ込んでいく。 気分の悪さは増長され、このまま倒れてしまいたくなるほど、私は立っていることも精一杯だった。
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