15.あなたの温もり

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私は俯きながら、平静さを取り戻すことに必死だった。 大丈夫…。 呪文のようにそう繰り返し唱えた。 最寄り駅までほんの数駅。 それまで耐えることができれば…もう、きっと大丈夫… 安易に安心したその時だった。 「ひっ」 その瞬間、電車が激しく揺れた反動で、雪崩のように人が倒れ掛かってきた。 全身の血の気が引き、急激に動機が激しくなる。 蘇る恐怖に青ざめ、背筋に氷を当てられたように身体が震え出した。
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