15.あなたの温もり

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意識を失う寸前だった。 突然、私を呼ぶ声が聞こえた。 それは、私がずっと忘れたくて、忘れることができなかった彼の声。 どうして…? どうして……楢崎くんがここに……。 「吸うことより吐くことに意識しろ」 落ち着いた声でそう言うと、楢崎くんの大きな手のひらが私の背中にやさしく触れた。 「一回の呼吸で十秒くらいかけて吐くこと。 可能なら息を吐く前に一から二秒くらい息を止めるといい。 ……そうだ」 楢崎くんの助言通りゆっくりと呼吸を促していく。
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