黒髪バスケの彼

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「……これで失敗するとかありえる? え、まさかの他校の人とかそういう展開ないよね」  あと五分ほどでチャイムが鳴るというのに、黒髪バスケの彼は現れない。  さすがに失敗するとは思ってなかったのでかなり焦ってきた。  そしてこのままだと遅刻してしまいそうだ。 「あれ、夢だったのかな……」  黒髪バスケの彼は実在しなかった……?  まさか私が作り出した妄想……!?  私そこまで知らない内にいろいろこじらせてしまっていたのか…… 「……行こう」  鞄を持ち直して、校門を後にしようとした、その時―― 「ほらヒロ、遅刻しちゃうよ! 相変わらず朝弱いなお前」 「うるせぇよ。間に合ってんだからいいだろ」  ――いた。  ――――黒髪バスケの彼だ。  時間ギリギリに、私の運命の人は突然現れた。 「お、おはようございますっ!」  私は黒髪バスケの彼に元気よく挨拶をする。 「……おいアキ、お前の知り合いか?」 「いや明らかにヒロに言ってると思うんだけど……ヒロの知り合いじゃないの?」 「知らねーよこんな女」  本物だ。  近くで見るとまためちゃくちゃかっこいい。  ヒロ、って名前なんだ……かっこいい! 「あの! 私二年の池崎そよ子っていいます! 一昨日の夕方、体育館でバスケをしてるあなたを見て私の全てを捧げる人だって思ったんです!」 「…………は?」 「でも名前も学年も分からなかったので校門で待ち伏せしてました!」 「…………おい、なんなんだよコイツ」  私はとにかく気持ちを伝えたくてありのままを伝えた。 「校門で待ち伏せって、バスケ部って最強のヒントもらってたんだから他にやり方あったんじゃない? それこそ放課後に体育館に来るとか」  隣にいた優しそうな人が笑いながら私にそう言う。 「ああ! その手があったか! うわぁ、ぜんっぜん思いつかなかった!」  普通に考えてそうだ。  どうやら私は無駄に手間がかかる作戦を実行してしまったみたいだ。  でも会えたのだから、もうなんでもいい。 「……頭おかしい女」 「ははっ! 面白い子じゃん」 「いや頭おかしいだけだろ。行くぞアキ」  黒髪バスケの彼はさっさと歩きだしてしまう。  待って、せっかく会えたのに……!
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