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そしてもちろん、好きな人が出来たことも十六年生きてきて一度もない。
テレビで見る俳優がカッコいい! 付き合いたい! とか。
あのアニメキャラが理想的すぎて結婚したい!とか。
そんな風に思ったことは何度もあるが、それを恋心とカウントしていいのかは恋愛経験がゼロの私には判断出来ないし?
「ハァ……」
毎年、この時期はため息ばかり。
一度しかない高校生活これでいいのか! もっと楽しめ! とラノベの学園ハーレム主人公に喝を入れて欲しい気持ちになる。
慣れない二年の階に着き、教室に入る。
席に座ると隣の席の女の子が話しかけて来てくれた。
「仲良くしようね~~」
そう言いながら、隣の席の上野さん(黒髪が似合う清楚なふわふわ女子)と笑顔を交わす。
もしかしたら彼女は私の未来の親友かもしれないし……そうだ! ポジティブに行こう! 私は今日を機に生まれ変わるんだ……!
と、思っていたら上野さんは今教室に入ってきた自分と同じようなふわふわ系女子を見つけて嬉しそうに駆け寄って行った。
両手で手を繋ぎながら、小動物のようなふたりはきゃっきゃと飛び跳ねている。
――上野さんの親友になるのは諦めよう。
同じクラスに親友が既にいるなんてその展開は予想していなかった。
さっきの自分の軽率な考えを反省したと同時に、きっと私は今年も、いや――これからもこんな感じなんだろうと思った。
――別にいいや。困ったこともないし。
――――そりゃ楽しいことも、あんまりないけど。
始業式はいつの間にか終わっていた。
きっと私の高校生活の方がつまらないんだろうなと思いながら校長先生のつまらない話を聞いていたら泣きそうになったことしか覚えていない。
今日は早く帰れるので、私は誰よりも先に教室を出た。
新しいクラスに不安も何もない。今まで通り適当にゆるーくやっていけるだろう。
「――――ない!」
誰よりも先に教室を出て寄り道もしなかったのに、帰っている途中に携帯がないことに気づく。
「うそ、なくしちゃった!? え~~……どうしよ……あ」
机の引き出しだ。
私は携帯をそこに置きっぱなしにしていることを思い出した。
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