黒髪バスケの彼

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   外れたイヤフォンからは虚しく恋愛ソングが音漏れしている。  そうだ、大事すぎることを忘れていた。  私は明日から名前も学年すらも分からない黒髪バスケの彼にどうやってアピールするつもりだったんだろう。 「あーーーーっ! 出鼻挫かれたーーーーっっ!!」 「そよこ! うるさいわよ!!」  下の階からお母さんの怒鳴り声が聞こえた。  お母さん、恋って難しいんだね。 「おはよー……」 「おはよう! って池崎さん、隈すごいよ!?」  次の日学校へ行くと、上野さんが私の酷い顔面を気持ち悪がることもなく心配してくれた。  やはり上野さんは女神だと思う。 「全然眠れなくて……アハハ」  あの後、元々学校で寝てしまっていたせいもあり全然眠ることができなかった。  とにかく今日はぐっすり眠れるように、今日あの黒髪バスケの彼を見つけ出そう。  この学校の人っていうことに間違いはないんだから……! 「よしっ! 頑張るぞ! おーーっ!!」  私の突然のテンションの上がり方に上野さんの肩がビクッとする。  ごめんなさい、上野さん。  いろいろ考えた結果、黒髪バスケの彼は二年生か三年生であるということだけはわかった。  新入生だったら昨日あんな時間に体育館でバスケをするわけがないという天才的な推理からだ。 「いやでも待って新入生だから逆に誰もいなくなった時間にバスケやってたとか……?」  あーもうめんどくさい!!  こうなったら手当たり次第全クラスに行けばいい。  早速まずは二年の全クラスを回ってみる。  時々一年の時のクラスメイトがこんな私に声をかけてくれたけど今は時間がないからちょっと遠慮したい。  そして最後のクラスまで回ったけど黒髪バスケの彼は見つからなかった。 「いやまだまだここからだ……よし次!」  自分を奮い立たせて一年の階に行き、同じように全クラスを回った。  新入生からの何とも言えない視線を感じるが気にしない。  はいそこの女子二人私を見てコソコソ話さない。 「……いない!」  一年の全クラスを見たがまたもや見つからなかった。  もうここまできたら次の三年の階が正解としか思えない。  絶対そこにいるはずだ。  待ってて黒髪バスケの私の運命の人……!  
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