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三年の階に行こうとしたその時、
「池崎! お前さっきからなにチョロチョロしてんだ!」
後ろから先生に首根っこをつかまれる。
「そっちは三年生の階だろ! さっさと自分の教室に戻れ!」
「やだ~! 離してよ先生! 私の青春がかかってるんだよ!?」
「意味わからんこと言ってないでさっさと戻れアホ」
ひどい。
こいつは人間ではない。
鬼だ。
畜生め。
私はそのまま泣く泣く三年の教室を後にした。
寝不足からか体が疲れ切って、黒髪バスケの彼にも会えず戦意喪失し抜け殻のようになりながら帰宅する。
「あんた昨日とは違って死んだようにテンション低いわね」
お母さんの言葉が胸に刺さる。
昨日の今日なのにこんなにうまくいかないなんて。
でもこんなことでめげてちゃいけない。
どうすれば絶対に黒髪バスケの彼に会うことができるんだろう……?
「あ! そうか! お母さん、明日めっちゃ早く起こして! 絶対だよ!」
「テンションが忙しいなお前は」
お父さんのナイスツッコミは聞き流し、私は絶対うまくいく作戦を実行するため昨日よりも早くベッドにもぐりこんで目を閉じた。
もちろん、イヤフォンで恋愛ソングを流しながら。
「よし!」
今日はなんて清々しい朝なんだろう。
まだ誰もいない校門の前に私は立っていた。
名付けて“誰よりも早く登校して黒髪バスケの彼を見つける大作戦”である。
学校に来るのにここを通らない生徒がいるわけがない。
これは絶対確実な必勝法である。
「あ~~! 緊張してきた……」
そして私は待った。
彼の姿が見えるのを。
たくさんの生徒に心の中でおはようと挨拶しながら、待ち続けた。
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