秒針

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気分転換をしようと寝室の扉を閉めた一瞬後、リビングへと向かった背にけたたましい音がぶつかった。 同時に伝わって来る振動。 「どうしたのっ」 妻がリビングから飛び出して来る。 二人して閉じた寝室の扉を恐る恐る開けた。 無残。 壁は突き崩され、ベッドの上どころか寝室には何本もの鉄骨が横たわっている。 あのまま眠っていたら。 僅かな時間の差で助かったこの命。 思わずその場に妻と共にへたり込んだ。 「申し訳ありませんっ」 多分、鉄骨を運んでいた者だろう。 用をなさなくなった壁の穴から覗く業者が叫ぶ。 「本当に申し訳ありませんっ。大丈夫でしたかっ」 「は、はい。しかしこれは……」
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