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彼女は手にしたノートをおかまいなしに開き、そのページを声を出して読み上げ出す。
10月16日
休み時間にショーコちゃんと話せた。テストの点数があんまり良くなかったそうだ。落ち込んでるショーコちゃんも可愛い。
『ああ、書いてたのぅそんなこと。若気の至りじゃなぁ』
10月22日
体育の授業で女子がグラウンドを走っていた。ショーコちゃんも走っていた。揺れていた。うん。揺れていた。やっぱりショーコちゃんは可愛い。君に釘付けだよ。
『うむ。若気の至り若気の至り』
10月30日
ショーコちゃんが女友達と話すために俺の椅子に座っていた。やばいやばいやばい。ショーコちゃんがいなくなったあと、椅子に座ってショーコちゃんの温もりを堪能した。興奮が収まらない。しばらくお尻は洗わないでおこう。
『若気の至りぃぃぃぃいぃっっ!?』
若さって怖い。
何がって、冗談じゃないっていうのが震えるほど恐ろしい。
そんなまさに人の負の部分が綴られた文章を読み終えて、彼女は言った。
「気持ちわるいなぁ」
どこか憎めないような、困ったような笑顔で彼女ーー若い頃のばあさんははにかんだ。
その反応に若い自分は捻くれたように机に突っ伏す。
「好きなもんは仕方ないだろ……」
「いや、度がすぎるってーー」
すると予兆もなく景色が滲んで薄れてきた。
部屋の色も形も掻き消え、若い自分とばあさんの姿も霧散していく。
あれよあれよと言う間に、目に映る風景は先ほどの真っ白な空間へと戻っていた。
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