駆け巡る灯

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「色々あったね、今まで」 「そうだな」 頷いて、ビールの缶をあおる若いころの自分。間を空けてから、少し楽しそうに呟く。 「でもこれからの方がきっと色々あるさ」 「そうかな」 「そうさ。けど何があったって、祥子がいてくれたら俺は大丈夫だよ」 「……そうね。ずっと一緒だよ」 若い頃の自分は立ち上がって、酔いが回っているのか少しおぼつかない足取りでばあさんの隣に座ってお互いに見つめ合う。 ん?何この雰囲気。 「あったりまえだ」 『ちょっ、やめるんじゃ』 「祥子」 「啓介」 『やめ』 「んっ……」 『ヌゥゥゥゥゥゥぅぅぅ!?』 誰にも届かないであろう、老骨の悲痛な悶えが響き渡った。 その叫びに答えてかはたまた偶然か。景色がまた変わりだした。 一度真っ白な空間へ。そして新たな風景を映し出す。
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