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「た、助かったわい」
何故に自分の恥ずかしい思い出を振り返るんだ、この走馬灯。つくづく悪質である。
次に変わった風景には見覚えがあった。
結婚した後、二人で暮らし始めたマンションの一室である。そこで儂とばあさんはテーブルをはさんで向かい合って座っていた。
二人の表情はさっきの走馬灯のときとは全く違い、重苦しいものになっている。
「もう駄目だ」
「そんなことないわよ。やり直せるわよ、これから」
「……簡単に言うなよ」
若い自分の顔に敵意が混ざる。
ーー覚えている。
当時、儂は勤めていた会社をリストラされた。
必死こいて働いていた儂にとって、その事実はどうしようもなく受け入れがたいものだった。
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