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「なあ、ボウズ。ミー太のこと、好きか?」
「……うん」
「俺も猫を飼ってたことがあってさ、大好きだったのに、死んじゃったんだ」
動物医としてまだ駆け出しの俺は、大きい動物病院のいち勤務医で、ひっきりなしにやってくる患者の受け入れに追われていた。
状態を見る。そして処置する。
それもできるだけ素早く。ただそれだけ。
激務のわりに薄給だし、体力もいるし、上司は口うるさい。
いっそ辞めて、まったく別の仕事でもしようかなんて思い始めていたけど……思い出した。今思い出したんだ。
「だから俺は医者になったんだ。こんな辛い思いをする人が少しでも減るようにって」
オレンジ色の川は少しずつ紫色に染まり始め、風も少しずつ夜の闇を纏い始めている。
少しの沈黙の後で、少年はミー太を抱く腕にもう一度力をこめて俺を見上げた。
「……僕も動物のお医者さんになる」
少年の突然の言葉に一瞬驚いたが、その純粋な思いに心が締め付けられた。
「おう、立派な医者になれ。俺なんか越えて、すげぇ医者になれよ」
「うん!」
「だから、ミー太のお墓作ってやろう?そしたらずっと、お前のことを見守っててくれるから」
少年は黙って、俺の指示に従う。
そして俺たちは河原の大きな桜の木の下に子猫を埋めた。
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