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「すみません、この駅より先って駅ありませんよね?」
「はあ……。そりゃここは終点ですからねぇ。でも……」
初老の駅員は懐かしむように、途絶えた線路の先を見つめる。
「昔はもっと先まであったんですよ」
俺は駅員に頭を下げて、帰路についた。
なあ、ミー太。俺はさっきまで夢でも見てたのかな。
どうして忘れてしまっていたんだろう。
俺が獣医になれたのはお前のお陰だったのに。あの日、お前と別れた日にそう決めたのに。
あの日、桜の木に誓ったのに。
いつしか目的だけが独り歩きをして、そして忙しさの中で忘れていったこと。それが何だったのか。
さっきのが夢でも構わないんだ。ミー太、もう一度お前が教えてくれたんだろ?情けない俺に。
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