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いた。瀬野はスイッチを入れると、部屋の隅に放り投げた。バイブは床の上でくねくねと動き、
唸るような低い音を出した。
「早く来いよ」
一人の空間に苛立ちが増す。再び空気を切るように起き上がると、シャワールームに向かい、
蛇口を捻った。大理石もどきの床面を跳ねる水音が狭い空間に反響する。湯温はなかなか温か
くならない。瀬野はシャワーヘッドの水形をマッサージタイプに切り替えて首筋にあてた。だ
が蛇口を全開にしても効果はなく、結局自分の手で揉みほぐす事にした。今日も眠れない気が
する。
もう一度、あの手に触れて欲しい。
瀬野は御崎の施術を思い出していた。そして、あの手が与えてくれる温もりは、ベッドの中
で他の誰と肌を合わせても得られないように思えた。
御崎が施した手順を思い出し、自分の手の届く範囲をマッサージしてみる。肩、腕、腰‥‥。
あの時の心地良さには全く及ばないが、目をつむると御崎の手の感触がかすかによみがえって
くる。それだけで手を当てた場所の皮膚の温度が上がってくるようだった。瀬野は御崎の手を
想像しながら、下腹部がじりじりと脈打ち始めるのを感じていた。
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