第1章

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 症状は段階的に酷くなるが、末期になるまでは割と活動に影響が出ない。初期症状としては傷が出来、爛れ、膿が出る。乾燥肌でやや痒みが強い。内臓系に多少の負担が出るものの、熱があまり出ないのを特徴としており、運動する事を妨げないのだ。バクテリアは水辺に生息しているが、動物などに移ってからは、潜伏期間に限り体液を介して別の水辺に移動出来る。体温くらいで活性化する一方で、潜伏期間中は簡単な熱処理……体温を高くする事で不活化したバクテリアを排泄出来る。また、発症してからは抗生物質で症状の緩和が可能だ。但し、末期になると脊髄へ薬品を打ち込み、脳への感染を防ぐ必要が生じる。致死率は1%を切る。勿論、末期になるまでだ。末期になると致死率は跳ね上がり、三割に近付く為、出来るだけ早い処置が推奨されている。  「ちょ、ちょっと待てよ!」  ジェイカが戸惑う。確かに少年の外傷は何らかの病状を疑わせる。が、そのような症状が蔓延しているなどの話は聞こえてこない。フェアフィールドとの付き合いからこちら側の文明の水準が低い事は知っている。こちらでは術式で片付けられる技術も向こうでは科学によって機械的に再現されている。不治の病も未知の病状も、向こうでは解明されている事も珍しくないらしい。とは言え、こちら側でその治療法を再現出来るかはまた別問題でもある。  「hヴあlzぶえ!」  少年はテオドールの強引さに恐怖心も抱いたか、逃げようとしている。必死に抵抗し、腕を振り解こうとしていた。  「落ち着けよ。ガキもビビってんだろ?」  「お前は分かっていない! 処置が遅ければこのくらいのコミュニティなんて全滅だぞ?!」  「うーu-~!」  必死な様子の少年が遂には呻き声を上げ始め、周囲の視線が俄かに集まり始める。  「ほら、嫌がっvんぃうあrてんだろ! 事jヴぁ情は;ksj説明ふlする! 取りhfu+OU敢えず、落vznsliuhち着けって!」  憤りか、ジェイカの言葉も混乱していた。  「hfPUV!」  「fhUE!?」  「vんlUDg; d!」  人々が集まって来た。が、テオドールは譲らない。少年も抵抗を続けている。  「おい!」  ジェイカが近付いて来たとある人物に気付き、声を顰めた。  「だから、状況は!」
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