第1章

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 テオドールの知る限り、異世界との境界線となる扉は割と一方通行だ。異世界側から地球への移動は容易でも、逆は難しい。異世界の住人と、地球での住人でも差異がある。地球人であるうテオドールはそれら統計的に得られた傾向にどこまで縛られるのか。いや、そもそも自分が通ったであろう扉は何処にあるのか。また、使える扉は何処にあるのか。異世界での情報が兎に角不足している。ここが難民キャンプであり、また地球と同じような救済する団体がいれば、何処かにここを統率し、或いは支援する団体が駐留しているだろう。言葉が通じるかは知らないが、先ずは結果的に期待通りに行けば効率の良い案件から可能性を潰していこう……と思ったテオドールは難民キャンプの中を歩き始めた。  難民キャンプのどの辺りにいるのか、見当も付かない。規模は大きい。流石に何万人はいなさそうだが、何千人は駐留していそうだった。まるで民族の大移動である。規模も然る事ながら、驚いたのは人種が混在している事だった。向こうでは異世界人と亜人は戦争状態だと聞いている。勿論、政治に於ける衝突や、宗教に於ける諍い、民族に於ける紛争などが、互いの人種の相容れぬ関係にイコールではないとは言え、ほぼ半々で、尚且つ両者がひとつの共同体を問題なく運営している事は想像さえしていなかった。  「何らかの自然災害か、それともパンデミック。いや、戦火から逃げてきたと言うところだろうか」  辺りを見回しながら、適当なテントを覗いた。大きい物から、新しい物から順に見ていったが、目ぼしいものはなかった。人が多い。太陽らしき光源の位置から推測すれば、昼時だろうか。若しかしたら配給があるのかも知れない。ならば期待する組織や団体との接触があるだろう――と踏んだテオドールは、人垣を押し分けていった。  「,kvblszgbkjvB;!」
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