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「そういう人体の蒐集家もいるし、宝石と同一視する文化圏もあるって事だよ」
「宝石?」
背筋が凍った。臓器売買や人身売買などは耳にしたことがある。だが、人体のコレクターなどフィクションの中でしか見た事がない。現実にいたのか。と訊かれれば、存在の有無から信じられず、想像も出来ないと答えるのが精一杯だ。
「だが、フェアフィールドは片目を売ったぞ」
「売った?」
恐らく麻酔などは向こう側と比べるべくもないだろう中、いや、術式に同様の効果を生み出すものがあったのかも知れないものの、いかなる方法に関わらず自ら目を奪う事に恐怖さえ覚える。
「二つあったものが一つになっても問題ないなら良いじゃないか。とか言って、平気で好事家に売ってたぞ。スゲー女子だったよ、お嬢は」
見た目は全く異なる人種でもある亜人からの敬愛されるフェアフィールドとは一体どんな女子だったのだろうか。いや、昔の話だ。今は女史と言った方が良いのかも知れない。何れにせよ、向こう側との往来を目指すのならば、遅かれ早かれ出会いたいものだった。
「sんd!」
「あっ、す、すまない!」
テオドールは少年とぶつかった。
「気を付けろよ」
ジェイカが呆れながら注意すると、テオドールに代わって少年を立ち上がらせた。
「vzrbhふ」
「vないshgrぅhlsz」
少年は服に付いた土などの埃を叩くと、ジェイカに頭を下げた。被っていたフードがずれ、上げたときには痩せこけた顔が明るみにさらされる。不衛生な上、傷のある皮膚は乾いていた。焦げたように全てが縮れた髪の色艶は薄れ、脂の乗った色を映している。身体も赤く、爛れたように膿んでいる所も見付けられた。
「えたぷhz;?」
どうやら気を付けろよ。と忠告したらしいジェイカが少年に手を振り、見送ろうとしたときだった。
「ちょっと待って!」
去ろうとした少年の腕をテオドールが掴み、引き留めた。
「おい!」
言葉も通じず、ただ恫喝するように聞こえただろうテオドールの態度にジェイカが苦言を呈する。
「ジェイカ! この傷……何時から有るのか訊いてくれ?!」
「はぁ? 何だよ、急に。お前の通訳者じゃねえんだぞ?」
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