絵描きはゼロ戦乗り。

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 目の治療が終わって、瞳を広げてみた。  手術後のベッドのうえから見た窓辺の風景が、このように美しいことは、驚きを持って俺を迎えた。明るかった、美しかった。全てに愛おしさが俺の胸に迫った。  気遣いを忘れない上官が、治療の具合を観察に来た。 《俺は、セロ戦乗りを志願しているのだった》  と、いう自分の分を思い出した。 「おまえの飛び立つ日が決まった」  と、上官は俺に告げに足を運んだのだ。 「母親に手紙を残せ」という趣旨のことばを言った。 《上官は、俺のすべてを救ってくれたのだろう》 ということは、ありありとわかった。
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