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「モモウサ……昔は痩せていた?」
一緒に木の上に乗せようかとモモウサを抱き上げると、非常に重い。見た目は兎に似ているが、異なる生き物であるのか。この重さは異常であった。
「まあ、いいか」
モモウサを背負って木に登ると、枝の上に立った。
「モモウサ、捕まっていろよって言っても指は短いよね」
ややモモウサが慌てていた。
「俺の家はね、こっちが海だから反対側だね……」
モモウサも大切な人を失って、墓参りをしているのだろうか。失うということは、本当に辛い。今ならば、モモウサの気持ちも分かる。ずっと、待っていたいのだ。
「モモウサ、泣けないのも辛いよな」
兎に涙はあるのだろうか。俺の方が泣いていると、心配そうに名護が見上げていた。藤原が見当たらないと思ったら、同じ木に登ってきていた。
「何だその、何?」
兎だとは見えなかったらしい。
「モモウサ君だ」
君を付けてから、性別を知らなかった事に気が付いた。
「多分、モモウサ君だ」
「そうか、モモウサって、これ鹿の角みたいだな」
傷だらけの兎の耳であった。あの建物に住んで、何度も斜面を転がって、又登って待っていた。それを想像すると、又、涙が落ちる。時速一キロの速度で、よく頑張ってきた。
「よし、こっちに来いモモウサ!」
藤原はモモウサを片手で持とうとして、諦めて両手を出そうとしたが、木の上で落ちそうになった。
「ちょっと座る。よし来い!」
モモウサを藤原の膝の上に乗せてやると、藤原が小さく呻いていた。
「よく育ったな……モモウサってもしかして、兎ではないの?」
やっと兎だと気がついたのか。何で気が付いたのかというと、前歯であった。ネズミだと言わなかっただけ、藤原も理科や生物をやってはいた。ここまで大きなネズミがいたら、人類は草がなくなって滅びそうだ。
「そうか、モモウサも印貢が気になっていたのか」
藤原も平気そうに、モモウサと会話していた。
「印貢は、ケンカは強いのにメンタルな面ではすぐに泣く。俺が怪我してもボロボロ泣くからさ、怪我できないよ」
メンタル面での弱さは否定できないが、藤原は派手に怪我しても笑っているから、つい代わりに泣いてしまうのだ。
「あれ、相澤さんは?」
「先にお参りして、車で寝ている」
相澤も相当に疲れているのだろう。運転をしてくれて、感謝してしまう。
「兄さんは、どこかにいるかな?」
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