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「モモウサって、あの巨大な何かか?」
俺が頷くと、白兎と見比べていた。
相澤が兎を抱えると、糞を落とされていた。兎は表情も鳴き声もないので、感情が全く分からない。置物のように可愛いが、何を考えているのか分からない。
「帰りはラーメンを食べましょう。高速に乗る前の店が、かなり美味しいとの噂があります」
ボロボロのラーメン屋なのだが、いつも行列ができていると、藤原が調べて言っていた。
「祖父母と一緒に帰るのでしょう?ラーメンは食べないでしょ」
祖父母になると、ラーメンは食べなくなるものなのか。
「この兎は飼っているものかな。何だか愛着が沸く」
野生ではないようだが、飼われているのかは分からない。
「ほら、俺を無視しているところが、印貢にそっくり。それに孤高を気取っている感じがある」
どこが、似ているというのか。俺は兎を持ち上げてみて、見つめ合ってみた。フンというように、兎が顔を背けた。かと思うと、俺の指を齧った。
「……確かに、俺に似ています。嫌だと噛みつくあたりが特に」
自分でも似ていると認めてしまった。
「持って帰りましょうか?叔父に聞いてみます」
家で兎は飼えるだろうか。兎を抱えて庭に戻ると、話しが終わったのか祖父母も庭に立っていた。
「叔父さん。裏山で兎を拾ってきたけど、これ飼い兎?」
叔父が兎を見て首を振っていた。
「野菜が荒されるから、兎は放していないよ。野生なのかな?」
叔父に摘ままれそうになった兎は、暴れて地面に落ちた。小さく振り返ると、すごい速さで逃げようとした。
でも、俺の方が兎よりも速かった。つい足で蹴りあげると、兎を腕に抱いた。
「弘武……兎はボールではないよ」
サッカー部なのだから、仕方がない。
「この兎、貰っていってもいいですか?」
「いいよ。というのか、野生だしね」
飼ってもいいのだろうか。チラリと季子を見ると睨まれていた。動物は責任を持って飼いなさいということなのであろう。
「母さん。兎を飼ってもいいですか?」
希子に兎を出してみると、祖父母の方が反応していた。
「我が家で飼うから、弘武が時々面倒を見に来てよ」
希子は母さんと呼ばれて、返事が咄嗟にできずに、かなり戸惑っていた。
「季子さん、爺ちゃん、婆ちゃんは飼ってもいいみたいです」
希子は、兎を手に持つと頬ずりしていた。
「母さんで合っています」
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