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母の墓前で紹介というのは建前で、単に一緒に遊びたいだけなのかもしれない。
「俺には、その料理を勧めないの?」
「相澤さんも一緒に食べましょう」
そもそも、運転手が車を止めてくれなければ、食事もできない。
「印貢のおこずかいで、大丈夫かなあ」
「少し働いてきます。それに学園刑事のアルバイト代も入りましたので、どうにかなるでしょう」
愛洲アイス屋で、夜、仕込みのアルバイトをすることになっている。
「……どこでアルバイトなの。そこまで頑張らなくてもいいから、俺は自分で払えるしね」
俺は首を振った。俺は、いつも、皆に面倒をかけている。たまには、俺も何かしたいのだ。
しかし家に帰り、佳親と季子に、俺は相澤の車で行くと言うと、がっかりされてしまった。
「まあ、あの人数ではね。弘武も気を使うかもね」
佳親が、どうにか納得してくれた。
「でも……ウチの両親ががっかりしそう」
希子は泣きそうな顔になりながらも、何か考え込んでいた。
「うん、でも、弘武君とは現地で合流するのだから、いいとしましょう」
どうにか、季子も納得してくれた。季子は、自分の両親に、俺の事を野生のウサギだと表現していた。一度には慣らせないので、じっくり付き合って欲しいと言っている。
どうして俺が、野生なのかは分からないが、高校生なのだ、両親と一緒に行動という年ではないであろう。
すると、季子の両親は、次はネズミの国?だと張り切り出したという。だから、親と行きたい年ではないと説明したい。
今度は藤原に、俺と名護は相澤と一緒に行くからと電話を掛けた。
「俺もそっちで行く」
藤原は全く迷わずに、直ぐに相澤に電話をかけていた。
「印貢、名護に取られそうかと思っていたけど、相澤さんという伏兵もいたよね」
相澤は、友達という間柄でもなく、どちらかと言えば上司であり、兄貴に近かった。相澤には、何でも相談しているような気もするし、何も言っていないような気にもなる。
「印貢、藤原も一緒ね」
夜は家を抜け出し、愛洲アイス屋でアルバイトをする。この愛洲も謎の多い人物であった。
「印貢、材料の分量をきちんと計っておいて」
倉庫の原材料を持って来ては、アイス工房と名付けた部屋に置く。単に雑用係であったが、結構重労働であった。
「友達に食事を奢りたい、か」
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