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相澤はいつも眠っているのに、テストの点はいい。
「相澤さんに相談したら、親父と佳親さんの関係を見習えと言われた」
何を相談したのか、俺は仰向けになると天井を睨んだ。
「何を相談したの……?」
「弘武と結婚したい」
幼稚園生か、小学生であるのか。何という相談なのだ。俺が唖然としていると、藤原は起き上がって俺を見つめていた。
「好きだよ、弘武」
藤原は真剣過ぎて、むしろバカなのかもしれない。日本では、男同士では結婚できない。でも、それでも真剣に悩んでくれるのが、藤原なのだ。
俺は藤原に抱き着くと、肩に顔を埋めた。
「……俺も、大好き」
真っ直ぐに好きだと言ってくれる、藤原が好きだった。まるで、俺があれこれ迷っているのを、全面否定されている感じだ。でも、何も迷わなくていい、俺は俺のままでいいと言っているようで、藤原の傍にいると安心する。
「母の実家の近くはさ、海と崖と森しかないような場所でさ」
再び寝転ぶと、とりとめもない話をする。
「蛇とかも多くてさ、ツチノコが出るとか言われていたよ」
幻の蛇、ツチノコ。
「ツチノコか。蛇は苦手なんだよな」
ツチノコも、太った蛇のようなものという認識しかない。
「それと、ジャッカロープを見たよ」
藤原に、どうしてそこだけ英語なのだと突っ込まれたが、日本語での言い回しが分からなかったのだ。
「兎と鹿の合いの子?みたいな生命体だよ。鹿の角が生えた、兎かな」
図を描くと、下手だと藤原に笑われた。
「兎だろ、そして鹿の角」
藤原が器用に絵を描いてくれた。
「そんなのが、道を歩いていたよ」
母の墓参りに行った時に、俺の横を兎が歩いていた。見ると、兎の耳は、耳ではなく鹿のような角になっていた。
こんな兎もいるのかと、俺は気にもせずに一緒に歩き、墓参りをして帰った。それから、ホーと電話で話していて、そんな兎はいないと言われ、ジャッカロープという名前を知った。
ジャッカロープは、未確認生命体だと言われたが、確かに存在していたと思う。
「この角兎か、いいね」
藤原は、ニカリと笑うと、布団に潜りこんでいた。
ここで、やっと気が付いたのだが、藤原は泊まってゆくつもりであろうか。
「藤原、泊まりか?」
「ああ、朝帰りにする」
まあ、今から帰っても、朝帰りも大差はない。
朝、藤原は目覚めと共に帰って行った。
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