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週末、墓参りに行こうとしていると、家にマイクロバスが止まっていた。
まるで温泉旅行のように、荷物を持った人が集まる。どういうわけか、タッパーも持って集まっていた。
俺は、集合を横目に、そっとマイクロバスの横を過ぎ、参道を下に降りる。
俺は相澤の車を見つけると、走って乗り込もうとした。
「息子がお世話になります」
車の横に、弁当を持った季子が立っていた。季子は、相澤にそっと車代を渡そうとして、断られていた。
「弘武君、おとなしくしていてね」
困った顔で、季子が笑っていた。子供ではないので、相澤に迷惑はかけないつもりだ。
「では、行ってきます」
マイクロバスには、俺がバイトして作った、アイスを差し入れに置いてきた。イチゴ生イチゴミルクというアイスで、苺尽くしの一品であった。女性のウケがいいのか、季子が喜んでいた。
希子が手を振って見送り、車は四区へと向かった。
しかし、名護との待ち合わせの場所に行くと、征響も一緒に立っていた。征響の横で、困ったように藤原もいた。
「征響?マイクロバスはどうしたの?」
「あまりにうるさくて、逃げてきた」
主婦連中で、喋りまくりになっているらしい。
残された秋里と、倉吉はきっと怒っているだろう。
「ああ……後ろに、簡易座席があるよ……」
車の前に、倉吉が現れると、恨めしそうにこっちを見ていた。その後ろには、殺気のある秋里もいた。
相澤の車には、普段は畳んでいるが簡易座席があり、八人乗りにもなっていた。
それで、その簡易座席は、俺と名護に充てられていた。
「どうして?」
「小柄だからだろ」
征響は助手席に乗っている。
第二章 岩陰と森と山 二
何となく待遇に不満を感じるが、名護と仲良く後部座席に座った。
「名護、ごめんな。狭い座席で」
「いいえ、印貢先輩の横ですから、ここでいいです」
どうも座席のクッションが固い。後ろを漁って毛布を出すと、椅子の下に敷いてみた。
「名護も敷いてみるか?」
名護の座席の下にも毛布を敷いていると、急カーブがあり、そのまま名護に激突していた。名護は、両手で俺を支えていたが、俺の額がガラスに当たった。
「いて!」
「大丈夫ですか?」
名護が傷を手で押さえながら、俺の額を見て吹き出して笑った。
「おでこ、出ていますね。だから鼻よりも、おでこが真っ赤……」
名護が俺を支えて笑っていた。
「名護!」
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