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俺が怒っても、名護は笑顔を崩さない。
「ほら、暴れない。又、ぶつけますよ」
ガラスに俺がぶつかった跡が残っていた。俺が袖で窓を拭くと、名護がタオルを出して窓を拭いてくれた。
「バイトしていたのでしょ。眠っていいですよ。相澤さんの車にはナビがあるから大丈夫です」
「相澤さん、伊勢海老フライ」
昼飯をセットしてあるのだろうか。
「抜かりなく」
どうやら大丈夫のようだ。俺は、名護に寄りかかるとそのまま眠ってしまった。
「印貢先輩、トイレ休憩ですよ」
高速のサービスエリアで目覚めると、他のメンバーは既に降りていた。名護は必死に俺を起こしていたらしい。
「ありがとう」
とりあえずトイレを済ますと、自販機の前に立った。相澤は、奥でラーメンを食べていた。
ここは、どこなのだと、サービスエリアの名前を見ると、半分走った所といった場所であった。
車の中の弁当を見ると、ほぼ完食となっていた。相澤も早朝に出てきたので、今頃になって腹が減ったのかもしれない。
「名護、腹減っているか?」
「いいえ。弁当を少し頂きました」
そうか、ならば飲み物を買えばいいか。俺は伸びをすると、売店を見て回った。
「印貢先輩、ほら、出来立てのどら焼きです」
いや、これはホットケーキであろう。焼き立てパンのコーナーがあり、名護が買っていた。
「弘武、出発するぞ」
征響に声を掛けられて、俺は慌てて車に戻った。
車に戻ると、名護は紙皿にホットケーキを乗せてくれた。これは、やはりどら焼きではない。
「……ずんだのどら焼きってのも近所にあって、あれはあれで美味しかった」
ずんだ大福というのもあったが、俺は、どら焼きしか和菓子を食べない。
「名護の好物って何?」
勝手に伊勢海老を目指していたが、名護の好みを聞いていなかった。
「何でも食べますよ。でも、肉が好きでしょうかね」
肉であるのか。それは、大枠過ぎて、何も料理が浮かんでこない。
「肉って牛?」
「牛も豚も鶏も食べます。嫌いな肉は、羊とか馬でしょうか」
それは普通であった。羊、馬はあまり食べない。
景色が変わり、時折、海が見えてきた。母の実家の近くに墓があるのだが、頻繁に来たという記憶はない。
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