自分ではないもう一人のわたしの世界

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目を開けると、そこには大きな鞄を左肩から提げて、此方を一度も振り向きもせず玄関のドアを開ける母親の姿。 ねえ、どこに行くの?もう夜の11時半だよ? 母親の服を掴もうと伸ばした右手は、指の先にさえ掠りもせずにから振る。 気がつけば、自分は家の2階の窓から、家の玄関前に止まっている車と、その持ち主であろう知らない女の人と自分の父親が何かを話しているところ、2人の弟の後ろ姿を見ていた。 しばらく様子をうかがっていると、みんながその車に乗り込み始めた。 ねえ、みんなでどこに行くの?私も連れて行ってよ。 ドンドンと窓を叩いても、まるで何も聴こえないかのように車のドアが閉まり、それは遠ざかっていく。 また気がつけば、自分は黒い服を着ていた。 目の前には長い木の箱があり、自分はその少し後ろに座っていた。 そして、その箱を囲むように、自分と同じく黒い服を着た人たちがみんな、あるものを見て涙を流していた。 ねえ、どうして泣いてるの?その箱には何が入っているの? 立ち上がり、泣いている人たちをかき分け箱の前に出る。 箱の一部が開いていて、覗いてみれば、自分がよく知っている、顔が真っ白い祖父が眠っていた。
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