第一章 岩陰と森と山

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「いいえ。名護には色々と迷惑をかけているので、 伊勢海老フライと、焼き魚を食べさせたいのです。おいしいです」  母の墓前で紹介というのは建前で、単に一緒に遊びたいだけなのかもしれない。 「俺には、その料理を勧めないの?」 「相澤さんも一緒に食べましょう」  そもそも、運転手が車を止めてくれなければ、食事もできない。 「印貢のおこずかいで、大丈夫かなあ」 「少し働いてきます。それに学園刑事のアルバイト代も入りましたので、 どうにかなるでしょう」  愛洲アイス屋で、夜、仕込みのアルバイトをすることになっている。 「……どこでアルバイトなの。そこまで頑張らなくてもいいから、 俺は自分で払えるしね」  俺は首を振った。 俺は、いつも、皆に面倒をかけている。たまには、俺も何かしたいのだ。
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