彼方の夢

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 気が付けば、それは当たり前の日常だった。  朝になれば母親が起こしてくれて、制服に着替えて顔を洗って家族と一緒にご飯を食べる。ほかほかの湯気が立ち上るそれを「美味しい」と言って笑う。 「明孝ー、早く行かないと遅刻するわよ」 「うわっ、やべ! 行ってきまーすっ」  明孝(あきたか)と、俺を呼んでくれるのは家族しかいない。男友達ですら名字の宮尾(みやお)呼びである。  別に友人に下の名前で呼ばれたいという願望はないが、いつか大切な人が出来たときに名前で呼ばれたいな、なんて細やかな願望はあったりして。  「女子か!」と自分でもつっこみたくなるような小さな夢だと思う。
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