第1章 *社畜の成れの果て*

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高校を出てそのまま地元のメーカーに就職して早四年半。 江口達哉、22歳。 俺はひどく疲れていた。 朝7時。 くたびれたスーツを着ていつも通りに家を出た。 ちなみに昨夜は3時間しか寝ていない。 本来の終業時間である19時から24時まで、5時間もの残業があったおかげだ。 「死にそう……」 駅の改札を通ったのと同時に、ポケットに入ったスマホが震えた。 【今夜22時から得意先のヤマザキ社長の接待あるからよろしく! 】 課長からのLINEを既読無視して、ため息をつく。 「……はぁ」 残業、早出、の毎日。ときたま残業がないと思えば接待や飲み会があり…… 営業職ということもあり、結果が全ての世界。成績のために躍起になるあまり、自爆営業にまで手を出す奴も少なくはない。 俺はこんな毎日にうんざりしていた。 『間もなく3番ホーム、急行池袋行き発車致します』 ***** 気付いたら会社と反対方向の電車に乗っていた。 「何やってんだよ……俺」 降りなきゃ…… 会社に戻らねーと…… なんて思ったが、体は動いてくれない。 そんな時だった。 「そこのあんた」 「……!?」
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