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ドア横に立つ俺を見て50前半くらいのおばさんが言う。
「フラッフラしてるし顔色悪すぎ。大丈夫かいな」
すごい形相だから何を言われるのかと身構えたのだが、どうやら杞憂だったらしい。
「あ、ハイ……」
力なく答えると、おばさんはため息をつき、座席を立って俺の方へ向かってきた。
早速空いた席を狙う中年サラリーマンをおばさんは睨む。
そして一言。
「兄ちゃん、あんたが座りなさい」
「……へ?」
「いいからいいから!」
戸惑う俺を強引に座らせ、おばさんは次の駅で降りていった。
「あったかい」
おばさんに譲ってもらった座席には微かに彼女の 温もり が残っていて……少し笑ってしまう。
ありがとう、と言い忘れたことを悔やみつつ、いつの間にか俺は意識を手放していた。
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