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『終点、池袋駅でございます』
「はっ……!」
終点を告げる車内アナウンスでやっと目が覚めた。
腕時計を見ると、9時半を指していた。
……始業時間はとっくに過ぎている。もう手遅れだ。
重い脚を引きずるようにしてホームへ降り立つと、スマホを開く。
【LINE通知50件 不在着信18件】
「……しらね」
上司や同僚の顔が浮かんだが
俺は無心で電源を切った。
罪悪感を抱えつつ、とりあえず東口に出てみた。
平日にもかかわらずアニメキャラの缶バッチが沢山ついたリュックを背負う女の子たちで溢れかえっている。
もちろんサラリーマンやOLも多い。
そのカオスな人混みは東口から真っ直ぐ横断歩道を渡ってゆく。
今の俺はその波に乗ることができなかった。
とにかく1人になりたくて、すぐに左折した。
ビックカメラの先の路地を進んでいくと、比較的人通りが少なくなる。
すごすごと歩いていくうちに、自分がどこにいるのかわからなくなった。
いつもサンシャイン通りばかりで
こんなラブホテル街なんて行かないから迷ってしまったのかもしれない。
……ていうかラブホなんか行ったことないし。
仕事で精一杯で恋愛してる暇なんかなかったから……だ。
少し悲しくなりつつ、自販機でお茶を買い、飲もうと視線を上げた瞬間……気になるものが目に入った。
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