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「次は~荻野~荻野に~止まります」
黄昏気分で外を見ていた俺の耳に独特なアナウンスが届いた。
それと同時に、俺の身体に少し力が入った。
電車で5時間。来てみれば近いものだ。
長旅ではないのだが、貸し切りの電車を出た後、旅行カバンを横に置き、背伸びをしてみた。
「ふぅ」と浅い溜め息ののち、眼前にある小屋すら無い駅を見て、また違う溜め息をつく。
少しそのままでいると、必死に叫ぶセミがジリジリと照りつける太陽の熱さを思い出させて、俺の額に汗をかかせる。
カバンを持ち上げ、ようやく駅から動いた。
俺の腕が重さを感じた。
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