第1章

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伏せられた小さな黒子のついた瞼が、震える。 母屋に設えた帳台(ちょうだい)の中、帳(とばり)越しの燭台の灯が白い小袖の背中を浮かび上がらせる。 縹(はなだ)の狩衣を纏ったまま、前だけを寛げて晴明が座している。 その膝に頭を預けて褥(しとね)にうつ伏せる姿。乱れた裾から伸びる白い足。 伏せた顔に晴明が手を伸ばす。その顎を捉えて仰のかせ、濡れた唇を親指で拭った。 うっとりと瞼を閉じるその頬を擽りながら、もう片方の手で小袖の襟を抜く。 肩から小袖を落としながら、晴明がゆっくりと上体を被せていく。寄せられた唇に、すべらかな肌が愛撫の予感に慄いた。 うなじの後れ毛に落とした唇が、紅い痕を残しながら首筋を這う。 肩の骨の形をなぞりながら、反らした背骨の窪みを辿った。 唇の先触れになった指が背骨の終わりまで行き着いて、双丘を撫で下ろす。 あ、とかそけき声が 零れた。 しかし指はその先には進まずに、脇腹を撫で上げて胸に回る。 咎めるように落とされた吐息に、晴明が薄く笑った。 背中に口づけたまま晴明が後ろから上体を抱き起こす。胸に回った指がもうとうに芯を持っている尖りを捕らえた。 下から捏ね上げるように淡く色づいたそれを押しつぶせば、形のいい頭が晴明の肩に仰け反ってくる。 あえかな声を零し続ける唇に晴明の指が押し込まれた。 同じように熱く濡れた別の場所を思い起こさせる肉の感触を味わえば、慣れた舌が晴明の指に絡みつく。 閉ざす事を許されない唇から零れ落ちる雫が顎へと伝う。 細い指が自分を苛み続ける晴明の腕にかかった。引き剥がすためではなく、ただ縋るために。 絶え間なく押し寄せてくる官能の波に、腕の中の吐息が浅く不規則になる。 口腔を侵していた指を引き抜かれて、やっと息をつくその身体を褥に押し倒すと。 ――見上げてくるのは鳶色の瞳。 その瞼にくちづけて、晴明は瞳を閉じさせた。 「……開いて」 膝に置かれた手で命じられて。震える足がゆっくりと開かれる。内腿に走る漣が触れている掌から伝わる。 立てた膝から脚の付け根に向かって手を滑らせると、投げ出されていた指が痙攣して褥に爪を立てた。 片方の膝裏に身体を滑り込ませた晴明が、その足を肩にかける。そのままぐいと膝が胸につくまで身体を折り曲げた。 大きく開かれた双丘の奥に指を這わせれば、赤い唇が噛み締められる。
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