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焦らすように入口のあたりだけをゆっくりとなぞっていると、とろりと溶けたそこが誘うように口を開いてくる。
軽くあてた指を呑み込むように引き込んで。 晴明の指を覚えてしまったその場所が、熱くうねって絡み付いてくる。
もっと奥へと欲しがるそこに、指を増やした。
荒々しく掻き回されて、あ、と仰け反った白い喉元に、晴明は背筋を抜ける情動を覚えた。知らず鼓動も早くなる。
まだ一指も触れられていないのに、もう蜜を零しはじめた昂ぶりにようやく指を絡めると。ああ、と甘い声が漏れて腰が揺れた。
紅く熟れた先端から溢れてくるぬめりを舌先で掬い取って。口腔に深く迎え入れたそれを大きく二度三度と上下させ吸い上げた。
散々に弄られて上りつめていた身体はもう抑えがきかず。 あ、あ、あッ、と細い悲鳴が上がる。
口中に蜜を放って細い肢体が痙攣した。
――金木犀の香りがした。
褥に散った小さな金の花を指で掬い……晴明はひとつ吐息を落とした。
甘い花の香りは帳台の外、母屋中にも満ちていて。夜気を入れようと広縁に出て格子を開けた。
簀子の端に立つ人影に気づくのが遅れて、どきりとする。
「……春花」
どうした、と近づくと人形のような顔が微かに顰められる。
「……金木犀の香りがする」
思わず手の甲で唇を押さえた。
「あれは良くない、晴明」
感情のない声で言われて晴明がむっとした顔になる。
「お前には関係なかろう」
硬玉の瞳でじっと見返され、分の悪い晴明が視線を逸らした。
「お前ほど力のあるものが、式に心をかけるのは良くない」
「余計なお世話だ」
ただの戯れだ、と言い訳のように晴明が呟く。
「路傍の石でも、拝み続けていれば神にもなると。そう言ったのはお前であろう」
半月の朧な光に照らし出された、額に浮かぶ紅い印。
「何を馬鹿な事を……花が散れば終いになるだけだ」
言い捨てた晴明が母屋に戻っていく。
「ただの花でも――願えばひとにもなるものを」
月に向かって腕を伸ばす。広げた指先を見つめて春花が呟いた。
月光の下、金色に輝くように咲く花を春花は物思わし気に見つめていた。
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