第3章

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「何か用か?」 「……胸、 直していった方がいいぞ」 痕が残ってると指差されて。 真っ赤になった博雅が慌てて前を掻き合せる。 「……人の顔を使って――ばか!」 ケダモノ!と言い放って博雅が帰って行く。 晴明が無言でその背中を見送った。 「……式はお前の望み通りにしたかっただけなのに」 後ろから春花の声がした。 「お前が悪い。 晴明」 分ってる、 と晴明が肩を落とした。 「可哀そうにな……花はもう色褪せはじめてる」 満開の金木犀の枝から、 花がほろりと落ちた。 了
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