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博雅が晴明の屋敷を訪れたのは笛の会の帰り。
青磁の狩衣に葡萄(えび)色の指貫のその姿は凛として清々しい。
覚えてきたばかりの新しい曲を聞かせてやろうと、
懐の笛に手を触れる。
春花も聞きに来ればいいがと思いながら、
相変わらずの荒れ屋のような屋敷の門を潜る。
と、
その庭に籠もる花の香りに驚いた。
もう秋も終わりだというのに咲き誇る金木犀??立ちこめる濃密な香り。
ふと気づけば庭に春花が立っている。
「春花」
微笑んで近づいた博雅が、
春花の表情に気づいて眉を寄せた。
「どうした?」
普段感情をあまり表さない春花の細い眉が、
愁いに翳っている。
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