第2章

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博雅が晴明の屋敷を訪れたのは笛の会の帰り。 青磁の狩衣に葡萄(えび)色の指貫のその姿は凛として清々しい。 覚えてきたばかりの新しい曲を聞かせてやろうと、 懐の笛に手を触れる。 春花も聞きに来ればいいがと思いながら、 相変わらずの荒れ屋のような屋敷の門を潜る。 と、 その庭に籠もる花の香りに驚いた。 もう秋も終わりだというのに咲き誇る金木犀??立ちこめる濃密な香り。 ふと気づけば庭に春花が立っている。 「春花」 微笑んで近づいた博雅が、 春花の表情に気づいて眉を寄せた。 「どうした?」 普段感情をあまり表さない春花の細い眉が、 愁いに翳っている。
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