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「しばらくここに来ぬ方が良い」
いきなり言われて面食らう。
「……なぜそんな事を?何かあったのか?」
「花が、
哀れだ」
視線を金木犀に向けたまま春花が言う。
言葉の意味がつかめずに博雅が困惑する。
「……春花?」
こちらに一瞥もくれずに黙って花を見つめる春花に、
それでも博雅は誘いをかけてみた。
「屋敷に入らないか?新しい曲を覚えてきた」
「式がいるから行かぬ」
いつもは式など気にした事はないくせにと。
春花を振り返りながら博雅は母屋へと向かった。
いつも式が控えている南階の上がり口。
顔を上げたのは、
いつぞやの金木犀の薫。
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