第2章

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「しばらくここに来ぬ方が良い」 いきなり言われて面食らう。 「……なぜそんな事を?何かあったのか?」 「花が、 哀れだ」 視線を金木犀に向けたまま春花が言う。 言葉の意味がつかめずに博雅が困惑する。 「……春花?」 こちらに一瞥もくれずに黙って花を見つめる春花に、 それでも博雅は誘いをかけてみた。 「屋敷に入らないか?新しい曲を覚えてきた」 「式がいるから行かぬ」 いつもは式など気にした事はないくせにと。 春花を振り返りながら博雅は母屋へと向かった。 いつも式が控えている南階の上がり口。 顔を上げたのは、 いつぞやの金木犀の薫。
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