第2章

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ほのかに笑みを含んだ唇の……艶かしさにどきりと した。 ……前からこんな風情だったか? 何となく戸惑って歩みが遅くなる。 春花が避けていた式は、 この薫か? じっと見つめてくる博雅に頓着せず、 音もなく立ち上がった薫が中へと彼を誘った。 捲った御簾を潜る時、 ふと首筋にひやりとしたものを感じて。 博雅の足が止まる。 ――視線? ゆっくりと首をめぐらせて背後を顧みる。 ……が、 そこには面を伏せた薫が控えているだけ。 ……気のせいか? 首をかしげながら母屋へ入っていく博雅の後姿を、 顔を上げた薫がじっと見つめていた。
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