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ほのかに笑みを含んだ唇の……艶かしさにどきりと した。
……前からこんな風情だったか?
何となく戸惑って歩みが遅くなる。
春花が避けていた式は、
この薫か?
じっと見つめてくる博雅に頓着せず、
音もなく立ち上がった薫が中へと彼を誘った。
捲った御簾を潜る時、
ふと首筋にひやりとしたものを感じて。
博雅の足が止まる。
――視線?
ゆっくりと首をめぐらせて背後を顧みる。
……が、
そこには面を伏せた薫が控えているだけ。
……気のせいか? 首をかしげながら母屋へ入っていく博雅の後姿を、
顔を上げた薫がじっと見つめていた。
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