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「……薫――あの、
下がって良い」
言ってはみたが晴明の命しか聞かないものか、
薫は動く気配がない。
ほかの式なら気にしたことなどないのに……なぜ薫ばかりがこうも意識されるのか。
気まずい沈黙に耐えられなくなった博雅が、
庭でも見ていようと立ち上がる。
御簾にかけた手の上に??ひやりと指を重ねられて。
はっと振り向けばすぐ後ろに立つ、
薫の姿。
「――っ」
冷たい指を額にあてられてくらりと眩暈がした。
振り払おうとした手を逆に掴まれて、
そこから凍み込んでくる冷気に腕が痺れた。
足の力が抜ける。
床にかくりと膝がつき、
手をつく。
……その腕にも、
もはや力は入らない。
崩れる体を支えられずに肩口から倒れこんだ。
霞む視界に薫の顔が被さってきた。
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