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心の臓を確かめるかのように、
薫の掌が胸をゆっくりと撫で擦る。
抗おうとしても腕に力が入らない。
床の上で指先だけが痙攣した。
唇を吸われたまま胸の突起を弄られて。
――身体の芯に、
抑えきれない火が灯る。
なのにその熱は薫に吸い込まれていくようで。
投げ出された手足は酷く冷たかった。
ようやく離れた薫の唇が顎をつたい、
肌を軽く吸い上げながら首筋、
そして胸元へ下りる。
ぬめぬめとしたそれが心臓の上で止まり、
その周囲を這いまわった。
博雅!とどこか遠くで声がした。
せいめい、
と呼ぼうとしたが、
もう声にはならなかった。
「――博雅!」
屋敷に戻ってきた晴明は、
金木犀の波動が異様に強くなっているのに気づいた。
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