Black stone

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「私、煙草って好きじゃないのよね」 いつもの朝、なんとはなしに呟いた。 爽やかで明るい朝の匂いと眩しく照らす朝日に包まれた、少し大きいベッド。 その上にふたりの男女が並んで横になっている。 「そうなんだ」 言いながら、彼はおもむろに枕元に置いてあったブラックストーンに手を伸ばし、ライターで火をつけた。 折角の柔らかな朝が、煙の匂いに支配される。 「言ってるそばから吸うのね……」 軽く呆れながら、彼の吐いた煙を鼻に入れてみた。けほ、と軽くむせてから、鼻の中に充満する甘ったるい匂いに胸焼けしそうになる。 それでも負けじと2回、3回繰り返し吸っているうちに、鼻が麻痺して匂いがわからなくなった。 「嫌がりながら君も吸ってるじゃないか」 気が付けば短くなっているブラックストーンを灰皿に押し付ける。シュ、と切ない音をたてながら、火は段々と小さくなり、消えていった。 「この匂いは好きなの。煙いのは嫌いよ」 健康にも悪いしね、と囁きながら、私は彼の胸、肺のあるであろう位置にキスをした。 そんな私を見て、彼は軽く笑いながらブラックストーンの箱をちらつかせる。 「これはね、正確には煙草じゃないんだよ」 彼が箱に書いてある小さな文字を指差す。 私はそこに目をやった。 「……葉巻?」
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