空気の世界

1・空気警察

あるスピード狂が、国道を250km/hで、走行していた。

当然、白バイが飛び出してきて、そのドライバーを取締りにかかる。
その現場のあたりは、騒然としていた。

「お急ぎですかー？　ちょっと出ていたかもしれない。あなた、クルマから降りなさい」

スピード狂のドライバーは、おずおずと、250km/hのクルマから降りた。
苦い表情をしている。

見る人間によれば、人生の破綻を、まさにいま目撃しているんだ、という対岸の火事の興奮を、ドキドキ・ワクワクしながら、泡でも食わんばかりにしている者もいる。

白バイ隊員に、突然殴りにかかるんじゃないか、と懸念する向きもあった。