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強がりではなくて、嘘ではなくて。
本当に、心からそう思う。
依存しすぎなのかもしれないけれど、真人の存在が、自分の中の強さなのだろう。
側にいてくれるだけで、自分は前を見れる。
智紘のはっきりとした言葉に、一瞬眼を見開いた真人だったが、すぐに「そうか」と呟いてやさしく微笑んだ。
「でも・・・・」
「ん?」
「そのこととは関係ないんだけど、ひとつ気になることがあってさ・・・・」
「気になること?」
「うん」
そう、気になることがひとつ。
帰り際に康平がいった言葉。
和哉には近づくな。
康平はたしかにそういった。
あれは冗談ではなく本気の言葉だ。
けど自分から見て、和哉はいい従兄なのだ。
康平ほどではないが、智紘にとっては兄貴分でもある。
小さい頃はよくあそんでくれたし、葉月が亡くなったときも一生懸命励ましてくれた。
康平とも仲がよかったはずだ。
それなのに、なぜ康平はあんなことをいったんだろう。
康平は理由もなくそんなことをいうヤツじゃない。
きっと意味があるんだろう。
けどこの数日、自分なりに考えてはみたがさっぱりわからなかった。
康平に訊こうともしたが、数日間出張にいくといっていたので、仕事先への電話は気が引けて結局まだ訊き出してはいない。
「なんだよ?」
一向に口を開かない自分に痺れを切らしたのか、真人が顔を顰める。
そんな重大に構えることはないのかもしれない。
真人にも報告する必要はないのかもしれないけれど、当の真人は早く話せとばかりに顎をしゃくる。
自分から振った手前、ここで話さないのは悪いだろう。
「実はさ、」
と、口を開きかけた瞬間、寝ていたはずの悟が身じろぎをして、おもわず口を噤む。
大きな欠伸をしながら、ゆっくりとした動作で悟が身体を起こした。
「ん~・・・・眠い・・・・」
「おはよう、悟」
「おはよぉ~・・・・」
悟はまだ寝たりないのか、眼を擦りながら何度も欠伸を繰り返す。
その仕草がなんともかわいくて笑いながら見ていると、遠くでチャイムの音が鳴った。
「あ!次体育じゃん!」
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